IPv4からIPv6への移行を実現するための技術は、大きく以下の3つの分類に分けることができます。それぞれの技術は、移行の段階や目的に応じて使用されます。
1. デュアルスタック構成
概要
- IPv4とIPv6を同時に使用する構成です。
- 移行期間中に最も一般的に使用される方法で、新旧のネットワークプロトコルを共存させます。
特徴
- サーバーやクライアントがIPv4とIPv6の両方のアドレスを持ち、必要に応じて使い分けます。
- どちらのプロトコルにも対応可能な柔軟性が特徴。
使用例
- 企業ネットワークやクラウドサービス(AWS、Azureなど)で広く採用されています。
- DNSでA(IPv4)レコードとAAAA(IPv6)レコードを登録し、接続環境に応じてプロトコルを選択します。
2. トンネリング技術
概要
- IPv6トラフィックをIPv4ネットワーク上で転送する技術、またはその逆。
- IPv4のみ利用可能なネットワークで、IPv6の利用を可能にする方法です。
主なトンネリング技術
- 6to4
- 自動的にIPv4ネットワーク上でIPv6トラフィックをカプセル化し送信。
- 簡単に導入可能ですが、対応ルーターが必要。
- Teredo
- NAT越えを考慮したトンネリング技術。
- 特に家庭用ネットワークや小規模ネットワークで利用。
- ISATAP(Intra-Site Automatic Tunnel Addressing Protocol)
- IPv4ネットワーク内でのIPv6トラフィック送信。
- 主に企業内ネットワークで使用。
- GRE over IPv4
- 汎用トンネル技術で、IPv4ネットワークを介してIPv6を送信。
特徴
- 一時的にIPv6を利用する環境を構築するために適している。
- 通信遅延やパフォーマンス低下が発生する場合があります。
3. プロトコル変換(NAT64/DNS64など)
概要
- IPv4とIPv6の間でトラフィックを変換する技術。
- 異なるプロトコル間の通信を可能にします。
主なプロトコル変換技術
- NAT64
- IPv6ネットワークからIPv4リソースへの接続を可能にする技術。
- IPv6アドレスをIPv4アドレスにマッピングして通信。
- DNS64
- IPv6クライアントがIPv4アドレスしか持たないサーバーにアクセスできるよう、DNSクエリを変換。
- NAT64と連携して使用される。
特徴
- IPv6専用ネットワークでIPv4リソースを利用可能にします。
- 一方向通信が中心で、双方向通信には向きません。
比較表
分類 | 主な使用目的 | 特徴 | 使用例 |
---|---|---|---|
デュアルスタック構成 | 段階的な移行、柔軟性を重視 | IPv4とIPv6が共存し、接続環境に応じて使い分け可能 | クラウドサービス、企業ネットワークなど |
トンネリング技術 | 一時的なIPv6環境の構築 | IPv4ネットワーク上でIPv6をカプセル化して送信 | 6to4、Teredo、ISATAPなど |
プロトコル変換 | 異なるプロトコル間の通信を可能にする | IPv6専用ネットワークでIPv4リソースを利用 | NAT64、DNS64 |
まとめ
IPv4からIPv6への移行を実現する技術は、現状のネットワーク構成や移行の段階に応じて使い分けられます。
- デュアルスタック構成は、段階的な移行に最適。
- トンネリング技術は、一時的な互換性確保に便利。
- プロトコル変換は、IPv6専用ネットワークでのIPv4リソース利用に適しています。
参考
総務省:我が国のインターネットIPv6対応状況等に係る調査結果(2022年度)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000891745.pdf
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