HLD(High-Level Design)とは?
HLD(High-Level Design)は、システムやソフトウェアの開発プロセスにおいて「上位レベル設計」(基本設計)を指す工程です。システム全体の構造、主要なコンポーネント、コンポーネント間の関係、およびシステム全体のアーキテクチャを定義します。
英語圏では「HLD(High-Level Design)」はよく使われる用語であり、特にシステム全体の構造やアーキテクチャを設計する初期フェーズを指すときに利用されます。
HLDの目的
- システム全体の概要を把握できる設計を作成し、開発チームや関係者間で共通認識を形成する。
- 実際の実装や「下位レベル設計」(詳細設計)(LLD: Low-Level Design)に進むための基盤を提供する。
- クライアントや上層部に対し、システムの全体像を説明するための資料を作成する。
HLDの内容
HLDで扱う主な内容は次のとおりです:
- システムアーキテクチャ:
- システム全体の構成図(例:クライアント、サーバー、データベースの関係)。
- モジュール間のデータフロー。
- 主要なコンポーネントとその役割:
- 各コンポーネントやモジュールの機能と概要。
- コンポーネント間のインターフェース(APIや通信プロトコルなど)。
- 外部仕様:
- ユーザーや外部システムとどのように連携するか。
- 外部インターフェースの定義。
- 非機能要件:
- システムのパフォーマンス、スケーラビリティ、可用性、セキュリティなど。
- 使用技術の概要:
- 使用するフレームワーク、プログラミング言語、ツールなど。
HLDを日本語に置き換えた場合
HLDは、日本のシステム開発用語において次のように表現されます:
- 基本設計:
- 日本のIT業界で最も一般的な用語。
- システム全体の構造や外部仕様を定義する工程で、HLDの内容に相当。
- 上位レベル設計:
- 直訳に近い表現で、HLDの内容をそのまま説明する際に使われます。
- IPA(情報処理推進機構)のドキュメント内では、上位レベル設計(HLD)と記載されています。
- 概要設計:
- 実務でHLDを簡潔に説明する場合に使用されることがあります。
- アーキテクチャ設計:
- 技術面に重点を置いた設計フェーズを指し、HLDの一部をカバーします。
HLDの具体的な位置づけ
HLDは、システム開発工程の「設計フェーズ」の初期段階で実施されます。以下のプロセスにおける役割を持ちます:
- 要件定義:
- ユーザーのニーズや業務要件を整理。
- 高レベル設計(HLD:High-Level Design):
- システム全体の構造や主要なコンポーネントを定義。
- 低レベル設計(LLD:Low-Level Design):
- 各モジュールや機能の詳細な設計(クラス、関数、データ構造など)。
- 実装:
- 実際のコード開発。
まとめ:HLD(High-Level Design)
HLD(High-Level Design)は、日本語では「基本設計」や「上位レベル設計」として広く認識されており、システム全体の構造や主要なコンポーネントを定義する工程を指します。この工程は、開発プロセスの初期段階でシステムの「全体像」を整理し、次の「詳細設計」に進むための基盤を提供します。
LLD(Low-Level Design)とは?
LLD(Low-Level Design) は、ソフトウェアやシステムの設計において「下位レベル設計」(詳細設計)を定義する段階を指します。HLD(High-Level Design)で定義されたシステム全体の構造や主要コンポーネントの概要を基に、各モジュールや機能の具体的な実装方法を設計します。
LLDの特徴
- 詳細なモジュール設計:
- 各モジュールの内部構造を定義。
- クラス、関数、データ構造、アルゴリズムの仕様を詳細に記述。
- 実装視点の設計:
- 実際のコーディングを開始するために必要なレベルの詳細を提供。
- 技術的な視点の強調:
- 使用するプログラミング言語やフレームワークに合わせた設計。
- HLDとの関係:
- HLDが全体像を示すのに対し、LLDはその「各部分の詳細」を掘り下げる設計フェーズ。
LLDに含まれる主な内容
LLDは具体的な実装のための計画を提供するため、以下の項目を含みます:
- クラス設計:
- クラスの属性(プロパティ)、メソッド(関数)、アクセス制御(public/privateなど)。
- クラス図や継承関係図。
- データ構造:
- 変数やデータの保存形式。
- 配列、リスト、ツリー、データベーススキーマなど。
- アルゴリズムの詳細:
- 処理フローや計算ロジック。
- フローチャートや擬似コードで記述。
- インターフェースの実装方法:
- モジュール間やクラス間の通信。
- APIやプロトコルの設計。
- エラーハンドリング:
- エラーが発生した場合の処理。
- ログ記録、例外処理の設計。
- ユニットテスト計画:
- モジュール単位でのテストケース設計。
- 各機能が正しく動作するかを確認。
HLDとLLDの違い
項目 | HLD(上位レベル設計) | LLD(下位レベル設計) |
---|---|---|
目的 | システム全体の構造と主要コンポーネントを定義。 | 各モジュールや機能の詳細な設計を定義。 |
内容の抽象度 | 抽象的で全体的。 | 具体的で詳細。 |
対象者 | プロジェクトマネージャー、設計者、顧客。 | 開発者、テスター。 |
成果物 | システム構成図、データフロー図など。 | クラス図、シーケンス図、アルゴリズム設計など。 |
実装への近さ | 実装に間接的。 | 実装に直接的。 |
LLDの作成手順
- HLDの確認:
- HLDで定義されたシステム全体像を基に作業を開始。
- モジュール分解:
- HLDで定義された各モジュールを、さらに詳細な部分に分解。
- クラスや関数の設計:
- クラスや関数を詳細に設計し、役割やデータフローを明確化。
- データ構造の選定:
- 使用するデータ構造(リスト、辞書、配列など)を決定。
- 設計書の作成:
- 各モジュールや機能について、設計書にクラス図やフローチャートを記載。
LLDを日本語で表現する場合
LLDに対応する日本語のシステム開発用語は次の通りです:
- 詳細設計:
- 日本の開発現場で最も一般的に使われる用語。
- 各モジュールやクラス、関数の設計を行う工程。
- 下位レベル設計:
- LLDの直訳で使われることがありますが、実務では「詳細設計」として認識される場合が多い。
- IPA(情報処理推進機構)のドキュメント内では、下位レベル設計(LLD)と記載されています。
まとめ:LLD(Low-Level Design)
LLD(Low-Level Design)は、システムやソフトウェア開発における「詳細設計」に該当し、HLDで定義されたシステム全体の概要を基に、モジュールや機能の実装に必要な詳細を定義する工程です。具体的な内容としては、クラスや関数、アルゴリズム、データ構造、インターフェース仕様などを設計します。日本の開発プロセスでは「詳細設計」として認識されることが一般的です。
HLD/LLDに関連する関連情報
- IPA(情報処理推進機構):
- HLDに相当する「基本設計」を説明。
- IPA ITスキル標準
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/download_v3_2011.html
- IEEE Standard 1016:
- ソフトウェア設計の標準規格として、HLDの定義を提供。
- IEEE公式サイト
https://standards.ieee.org/
- PMI(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド):
- プロジェクト設計プロセスでHLDを定義。
- PMI公式サイト
https://www.pmi.org/
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